空と君との間に

初ライヴ

ライヴ当日…成人の日


俺達は、一番手だ。


本番前のリハーサルでは、演奏順とは逆に、最後に演奏するバンドから、音を出す。


そうすれば、リハーサルが終わった後、音響がそのままの状態で、待機できるからだ。


俺達は、他の出演者の演奏を、わざと見ないようにした。


楽しみが無くなる、という意味もあるが、それよりも、美紗に集中させたかった。


自分達のリハーサルも終え、俺達は、暇潰しにコンビニに向かった。


リハーサルと言っても、俺達の場合、スピーカーから出る、俺のギターの音量合わせと、美紗の「あー、あー…」
…の、声のみだった。


俺は、本番のお楽しみ、という理由で、わざと美紗に唄わせなかったのだ。


それだけの、自信があったんだ。


開演時間が迫ってきた頃、俺達は、会場に戻ろうとして、驚いた。


会場には、市民会館を借りていたのだが、その駐車場に停まっている車は、200台を超えていて、満車に近い状態だった。


「…何だよ、こりゃあ」


「車だけで、この量かよ…客の数、500人超えてるかもな…」


「うそー?!私、そんな大勢の前で歌唄うのぉ?」


「みたいだな…」


以外だった…確かに、今夜演奏する、10組それぞれの知り合いが来たら、それなりの数にはなると、予想できる。


しかし、成人式で、今夜のイベントを知った者が、予定外に多く、集まったのだ。


しかも、受付に聞くと、どうやら『NEMESIS』の時のファンが、噂を聞き付け、訪れているという。


『NEMESIS改め、seraph』


配られるパンフレットのビラにも、そう書かれてあった。


「こいつはやべぇぞ。空…美紗、大丈夫かな?」


「確かに心配だな。緊張で歌唄えなくなったら、どうしよう…」


「どうしよう…って、どうにかしなきゃだろ!」


「分かってるよ…でも、どうしようもないもんな…俺達には」


美紗は、見るからに緊張している。


「美紗、いいか?ステージの上は、照明が当たっていて、以外に客席が見えないんだ。顔の表情は特に」


「う、うん…それで?」


「いや、それだけだけど…」
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