奏でるものは~第4部 最終章~
第1章


高校2年生の終わりに、優さんと最後に話してから5年後。


第一希望の芸術系の大学を卒業した私は、上場企業である、サイタグループ系の株式会社サイタに就職した。


スポーツ支援の為の施設、文化行事の為のホールや練習場を統括する、スポーツ文化推進部は、本社から車で20分ほどのところにある。
毎日、車を運転して通勤する。


業務は、イベントへの演奏派遣や文化公演の支援、企画、それに関わる事務手続き。
自分でも出演するため、お稽古の時間も確保できる。
会長の親族とは言え、業務内容を把握するため、2年ほどは普通の社員として働く。
そう言われ、今は熊野歌織で働いている。


業務内容は分かっても、書類手続き、派遣先との取り引きや舞台の大道具などの手配のやり取りなど、学ぶことは多く、会社の幹部役員の身内であることを隠しているとは言え、大きな失敗は出来ないと気を張ってきた。





< 1 / 147 >

この作品をシェア

pagetop