恋は突然に 意地悪なあなたの甘い誘惑

kiss

そのころ綾乃は、一人海岸の石段に座っていた。
(- いつのまにこんなに弱くなった?一人でも平気だったのに。アイツに言われたことがこんなに傷つくなんて。傷つかないでいいように自分を守ってきたのに。だから、こんな仕事したくなかったのに…。)

こらえきれず涙が頬を伝った。


和弘は、息を切らして周りを見渡した。

(- どこ行ったんだよ。こんな夜に女一人で…。)

「…!!」

(- いた!)

「お…。」
おい、と呼びかけようとして、綾乃の涙に気づいた。
和弘はその場に立ちすくみ、綾乃の横顔を見ていた。

月明かりに照らされ、空を仰ぎ見る綾乃は儚く今にも消え入りそうだった。

そんな感覚に陥り和弘は慌てて綾乃を後ろから抱きしめた。

その行動に綾乃はびっくりして後ろを振り向こうとした。

「振り向くな!」
自分の行動に自分自身が理解できず、和弘は言葉を発した。
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