あの日の私は、
「よっ」
そう言って頭をくしゃくしゃっと撫でられた。
「もう、春樹!やめてよー!髪がぐっしゃになるでしょ!?」
「んなの、もともとだろ」
春樹はそう言いイタズラに笑った。

「七々海ちゃん!松井先輩と一緒に帰ってたって本当??」
クラスの女子が、少し不機嫌に聞いてきた。前の席の春樹が松井先輩と聞いた時にびっくっとなった気がしたけど、気のせいだろう。
「うん、本当だよ」
「なんで!?七々海ちゃん、男子には興味無いって言ってたじゃん!!!なに、先輩に手出してんの?」
どうやら、優人はすごく人気らしい。
こんなに人気なのは知らなかった。
「なに?七々海が松井先輩と帰っちゃダメな理由あるの?」
そう言い出したのは瑠唯だ。
瑠唯はこういう時、すっごく強い。
「いや…無いけど…。でも、」
「じゃあ、無責任に七々海責めるのやめてくんない?」
「別に私たち責めてる訳じゃ…」
「瑠唯、やめてあげて。私もそんなふうにとらえてないし、第一、優人とはただの幼なじみだから。」
「七々海…」
「ふんっ、」
弱そうな声を出して、クラスの女子は廊下に出ていった。
「瑠唯…ごめん。」
「七々海が謝ることないよ!!」
「うん…」




優人のことを『ただの幼なじみ』と言った時のあの感覚はなんだったのだろう。
苦しくなるような、切なくなるような…
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