スーパーアイドル拾いました!
「海斗だって、戻る時だって分かっているだろう?」


「ああ…… なぁ、真。ちゃんと俺の事、見ていてくれるよな?」


「分かった…… 見ているから……」


「少しの間、母さん頼むわ……」


「えっ?」

 真の驚いた顔に、海斗はニヤッと笑った。


「じゃあな」


 海斗のサングラスを掛けた姿が、覚悟を決めて前に進む男の姿に真には思えた。


 山中が真に近づいてきた。


「色々とありがとう…… それで、条件とは?」


「はい!」

 真は姿勢を正した。


「僕にお金を貸して欲しいんです」


「どういう事?」

 山中は、穏やかな顔で真を見た。



「大学資金を貸して欲しいです。勿論、奨学金も借りるつもりですが、どうしても、母さんに負担を掛けてしまう。その分を、お借りしたいんです」


「なるほど…… だけど、海斗を引き渡してしまったら、僕が君にお金を貸さないとは思わなかったの?」


「ええ。海斗がここに居た証拠は、僕のスマホにしっかりと写っていますから…… 母さんとの事も…… もし、口約束だけでしたら、この写メをネットにアップしますから」

 真は、高校生とは思えない落ち着いた笑みを二人に向けた。

 勿論、そんな事をするつもりは無い……


「あははっ…… 参ったよ」

 山中も海斗も笑っていた。


「それじゃあ……」


「ああ、大学合格したら連絡くれ! これは、悪魔で真君と僕との取引だからね!」

 山中は真剣な大人の目を、真に向けた……


「はい。ありがとうございます」


「でも、真君。大学行くより、うちの事務所に来ないか? 海斗より人気出そうだけど……」

 ニヤリとした山中の目は、まんざら嘘でもなさそうだ。

 真は海斗をチラッと見た。

「せっかくですが、辞めておきます」


 海斗がふっと顔を上げ真を見た。


「真…… 大学って? バレーか?」


「ううん。僕、医学部に行こうと思っている」

 海斗は驚いた様子もなく、真の肩を叩いた。



「そうか…… がんばれよ…… 行ってくる」

 海斗はまるで、買い物でも行くかのように、さらっと出て行ってしまった。


 中山が、真に大きく肯いた。
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