溺愛は突然に…
2.初めての恋は×××
「…楓ちゃんゴメンな、急に誘って」
「…いえ」

とりあえず、頼んだ飲み物を飲んで自分を落ち着かせようとした楓。

…本当は、会社近くの喫茶店で話を聞いて、直ぐに帰るつもりでいた楓だったが、陽翔の押しに負けて、今、レストランの中にいる。

「…このお店、気に入らなかった?」

浮かない顔の楓に、心配になった陽翔が問いかける。

「…え?!いえ、そんな事は…こんな高級なレストラン来たことないので、なんか緊張しちゃって」

そう言って苦笑いする楓を見て、陽翔は安心したように笑った。

「…緊張なんか、する必要ないよ。旨い飯を旨いって言いながら、どうでも言い話をすればいい、居酒屋感覚でさ」

何て言うもんだから、楓は思わず吹き出してしまった。

好奇の眼差しで見られても、楓は笑っていて、陽翔も、その屈託のない笑顔に、一緒に笑っていた。

…。

そう言えば、なんか、話があるって言われたような?

レストランを出た途端、それを思い出した楓は、一歩先を歩く陽翔に声をかけた。

「…西城社長」
「…ん?」

「…何か、お話があったんじゃ?」

楓の言葉に、足を止めた陽翔が振り返って、楓を真っ直ぐ見つめた。

…月明かりに照らされた陽翔の顔はとても綺麗だと、楓は思った。

「…楓ちゃん、俺さ…」
「…?」

「…一回しか言わないから、よく聞いて」
「…はい」

…会社では、絶対見せない緊張した陽翔の顔に、楓までもが緊張してしまう。


「…俺は、楓ちゃんのことがす『ピリリリリ!』

なんて、タイミングだろう。楓の携帯が鳴った。
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