最初に熱湯を注いでください

この話題は掘り下げられたくないのか、彼はおもむろに話題を変えた。

「あ、何か追加する?飲み物でも、デザートでも」

「私は何でも」

頭の中は今を乗り切ることで一杯で、飲み物ひとつ考える余裕はない。

「部長はいかがですか?」

「私は結構」

彼は店員さんを呼んで「ロイヤルミルクティーひとつ。ガムシロップをつけてもらえますか?」と注文した。
店員さんが復唱して戻って行くと、まだ諦め切れないらしい部長が未練をこねくり回すように口にする。

「優美花は随分と乗り気だったんだよ。君を気に入っていたみたいでね。彼女の前で失礼な言い方になるが、見た目も気立ても悪くないと思うんだがなー?」

「恐れ入ります。優美花さんは素敵な女性だと思いますが、お話をいただいた時にはすでに彼女と出会ってしまっていて、ご縁がなかったかと」

「まあ仕方ないな、こういうことは。快く部下の幸せを応援するよ」

「ありがとうございます」

部長さんが今度こそさっぱりとコーヒーを口に運ぶので、私も届けられたロイヤルミルクティーにガムシロップを落としてホッと一息ついた。

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