好きですか? いいえ・・・。





「カラーボックスの中にタオルがあるから、取ってくれない?」



「カラーボックス?」落合くんは周りを見回した。



「どこにあるの?」



「脱衣所。一番上。」



たったこれだけのトークラリーがしんどい。体温計が正直なのか、病は気からなのか、いよいよしんどくなる。吐きそうになる。歩けていた時は慌ててトイレに駆け込むなんてこと、容易にできたけど、今は吐きそうになったら、人より少し早めにトイレに駆け込む準備をするか、トイレットペーパーの入った洗面器を用意しなきゃいけない。でも、もし、吐いてしまった時、吐瀉物を落合くんに見られるのは、嫌だ。



落合くんが脱衣所からタオルを取って来てくれた。それを受け取って、ポンポンと叩きながら拭いた。時間が経ったせいで、あんまり効果はない。ついでに、拭いたタオルを水で濡らしてきてもらうことにした。落合くんはすぐに絞って、横になった私の額に濡れタオルを当てがってくれた。



優しい。きっと落合くんと結婚したら、落合くんはいい夫になってくれるはずだ。家事も手伝ってくれる。出産から子育てまで手伝ってくれる。そういう人になる。



そういう人、落合くんみたいな人と私は結婚した方がいい。いいに決まってる。ここまでしてくれる人のことをどうして好きになれないのか。



私は私がわからない。




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