はやく気づけ、バカ。



(...こんな時間に誰...?)
少しの恐怖から、ドアスコープを覗いて確認してみる。


「あの、甘利さん起きてらっっしゃいますか?」


丁度、スーツ姿が似合う分厚い胸板が見えた時、聞き覚えのある声が聞こえた。


(...真島さんだ...)
そう思った後すぐに思ったのは、“まちがいない”と“どうしよう”の二つ。


(...無視するわけには、いかないよね...。)


それは社会人として...というよりかは人として少しどうだろうと思った私は、「はい。」と少しそっけなく返事をすると、ガチャリとドアを開けた。


「どうしたんですか?」
夜の11時に。と少しだけ心の中で嫌味を言う。

(...嫌味なんて言っていい存在じゃなさそうだけれど...)


先日、エレベーターの中で無視してしまったというしこりが、私の心の中には残っている。





< 129 / 139 >

この作品をシェア

pagetop