MAYBE TOMORROW
第三章 中也、ランボオ、ヴェルレーヌ。そしてリルケとヴァレリー

あの日以来すっかり読書をする習慣がついてしまった。
「あの日」というのはもちろんお兄ちゃんに逢った
クリスマスイブの日。

わたしはあの日お兄ちゃんに「ロミオとジュリエット」をもらった。
そして翌日には一度目を読み終えてその後もういちど読んだところで
本屋さんに行った。

何か急に本が読みたくて仕方がなくなったのだ。

わたしはそこで膨大な棚の中からゲーテの「若きウェルテルの悩み」
を取りレジに持って行った。

作者の名前を知っていたことと、なぜだかその題名が
わたしの内面に呼応したのだ。

きっと今の自分をまるで映し出しているかのように
感じたのかもしれない。

その後も手当たり次第に本を読み漁った。せめて本を読むことが
逢うことの出来ないお兄ちゃんとの「唯一」のつながりのように、
そのころのわたしには思えたからかもしれない。

あるいは「救い」だったのかも。
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