先輩、一億円で私と付き合って下さい!
「なんか言いたそうだけど、もしかして彼女でも来てるのか?」
「まさか。でも、俺は嶺に隠し事はできなさそうだ。いつまでも隠していても仕方ないし」

「なんだよ一体」
「嶺のお蔭で、俺、何とか勉強に集中できそうだ。期末に向けて、嶺に教えてもらった要領で頑張ってるし、自分はできるんだって自信もついて、昔ほど卑屈にならなくなった。寧ろ、嶺には感謝してる。ありがとう」

「改まってなんだよ」
「俺、嶺の事が気に入ったんだ。だから今から話すことに驚かないで欲しい」

「一体なんなんだよ。もったいぶらずにさっさと言えよ」
「今父が来ていて、風呂に入ってるんだ」

「お父さん来てるの?」

 ユメの母の再婚相手か。
 どんな人なんだろう。

「テストの点が上がった事で褒められたんだ。それで、勉強を手伝ってくれた人がいるとそれとなくほのめかしたら、お礼がしたいって」
「それで俺に金でも渡したいってことか?」

「そうだったら、いくら欲しい?」
「いらないっていってるだろ。そんなことでニヤニヤしてるのか」
「いや、違うんだ」

 そこで風呂から上がってきたセイの父親が、タオルで頭をふきながら部屋に入って来た。
 奥のリビングルームに居る俺に気が付かないで、台所で冷蔵庫の扉を開けて飲み物を探しだした。
 金持ちらしくバスローブをまとっている。
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