先輩、一億円で私と付き合って下さい!
 俺のような捻くれ者に物怖じせず気軽に近づいてくるのは江藤にしかできないと、俺も思うところだった。

 江藤は裏表なく気さくで、それなりに俺とは波長が合い、俺も気軽に付き合えるところは気に入っていた。

 とにかく江藤は敵を作らず、人の懐に入って懐柔するのが上手い。
 早く言えば好奇心旺盛の知りたがり。

 そのためには努力を惜しまないのだろうが、結局のところ、俺も江藤に上手く丸め込まれているから、その能力は侮れない。

「そうだな」

 最後は素直に認めてやると、江藤がニヤリと憎たらしい笑みを浮かべて、自分の勝利を俺に見せつけた。

 それから急に上から目線で俺にお節介してくる。

「これもお前の周りの事をよく知ってるから助言しておくけど、ノゾミちゃんを守ってやれよ」

「どういうことだよ」

「お前の彼女になったからだよ。それを良く思わない奴がいるってことだ。それくらいわからないのか」

「そんなの知るかよ」

「おい、おい、女の嫉妬は怖いんだぞ。ノゾミちゃんに嫌がらせする奴だってこの先出てこないとは限らない。天見が付き合うと言った以上は、その責任もしっかり頭に入れとくんだな。ノゾミちゃんはか弱そうだから、虐めのターゲットになりやすいぞ。注意して見ててやれよ」

「大げさだな、たかが俺と付き合ったくらいで、まさか襲われるって事はないだろうし」

「いやいや、モテることは天見自身多少わかってはいるだろうけど、どれほどの規模かあまり把握してなさそうだ。今まで何度と告白されて、そして断ってきた。天見はそれだけで高嶺の花と位置付けられて、女の子の間ではどうやってゲットするか作戦が練られてたんだぞ。それが、今年入学してきたばかりの大人しそうな下級生と付き合いだしたら、皆、納得いかないんだよ。それは一番ヤバイ展開なんだぞ」

「しかしだな、アイツとは……」

 ここで思わず俺は三ヶ月の期限の事を話しそうになり、それを飲み込んだ。
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