S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
♡ふたりの婚約
時刻は夜7時。
私はラッピング袋を手に椿の家の門まで来ていた。
食べたいなんて椿に言われて……私が作ったのはおからクッキーだ。
お豆腐を作る時に出るもので、豆乳から絞ったこのおからをお母さんは昔から料理に使っている。
ウチのお豆腐をおもてなし会に、とは思ったけどローランド先生に却下されたから。
ならばせめて!お豆腐の味に近いものをと思って、おもてなし会のレシピとして私は明日ローランド先生にこれを提案するつもりだ。
子供の頃、椿と一緒に食べた思い出の味。
それでお母さんに教えてもらいながら作ったおからクッキーを、椿に味見をお願いしようとは思ったんだけど……。
ついつい今までの癖で椿の家の前に来てしまったけど、ラスボスが私の出入りを禁止したことを思い出した。
万が一のことがあれば黒崎さんまで叱られるはめになってしまう……。
だから、このクッキーはまた後日に渡そうと踵を返したその時だった。