S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
♡キミのために奏でる音
今日一日ふたりの婚約の話題で持ち切りだった。
放課後になっても憧れの王子とローズクイーンの輝かしい未来の想像をして、キャーキャーはしゃぐお嬢様方。
私はというと。
ホントはすぐにでも椿の顔を見て話を聞けたらって思ったけれど。
幼なじみだからといって、そこまで踏み込んでいいのか戸惑って出来なかった。
────“叶わぬ夢にしがみついても、キミが傷つくだけだから言っているんだ”
今更、ラスボスの台詞が身に染みる……。
おもてなし会もまもなくと迫る今日、授業中も集中しようと心がけてはいたものの、出来るわけもなく……。
「ここなら落ち着いて話せそうだね」
そんな私を気にかけてくれた火神さんと戸澤くんが、静かなところで話そっか、と第二音楽室へと連れ出してくれた。
「ごめんね……気を遣わせて」
本来なら私は入れないこの音楽室だったけれど、どこへ行ってもふたりの話で騒然としていたから好意に甘えさせてもらったのだ。