夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

…ヒナにも、早く読んでやりてぇな。

子供向けの絵本が置いてある場所で立ち止まり、可愛い絵の描かれた本を手に取って見つめていると…。
ふと、思い出す。

頑張って文字を覚えて、何度も何度もその本の文章を覚えてしまうくらい読んで読んで…。
俺は、誰かを待っていた。


……。
待って、いた…?…誰…を……?

”誰を?”と、俺は自分に問い掛ける。

…でも、分からない。
顔を思い出す事が出来なくて、その人が誰なのか分からない。


「っ……。」

絵本を持つ手が震えて、全身が心臓になったみたいにドクンドクンッと脈を打つ。

頭の中に、まるで映像のように映る視線の先。
目の前に居る”誰か”を、見上げようとした瞬間。


「いっ…ッ!」

ズキンッと激しい頭痛に襲われ、持っていた絵本を地面に落として…。
俺は頭を押さえて身を屈めた。
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