夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

抵抗は、しない。
これが母さんが望んだ、幸せの道。


「行くぞ、ガキ」

鎖を引かれて、最後にもう一度母さんの顔を見た。


涙は出なかった。
でも、笑顔になる事も出来なかった。

あんなに母さんの役に立ちたかったのに……。
母さんの幸せを、喜びたいのに……。

母さんに怒っている訳でも、恨んでいる訳でもないのに……。
俺は、この時ばかりは微笑えなかった。

母さんとの最後の時に、俺は微笑って別れる事は出来なかったんだ。

……。

だって、俺はね。
母さんの傍に、ずっと居たかったんだ。
例え怒られても、厳しくされても、どんなに生活が苦しくても……。

母さん。一緒に、居たかったよ。


大切な人と、一緒に居たい。
俺が1番望んでいた事に、ようやく気付いた。

……でも。
それと同時に、俺には決して叶わない願いなのだと分かって……。

俺は、全ての記憶と想いに……蓋をしたんだ。

……
…………。

〈回想終了〉
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