水面の月
一章

入所

車窓の外は少しずつ景色を変え、さっきまで建ち並んでいた都会のビルは姿を消して、緑の溢れる清々しい景色が俺の目の前を流れていく。


「もうすぐ、着くからね。」


母は微笑みながら、運転中だというのに振り返って俺に告げた。


「危ないから、前向けよお袋。」


溜め息を洩らすと「生意気ねぇ」と唇を尖らせる母。



俺は今日から、新しい療養所で生活するらしいが、そんなことはどうでもよかった。

小さい頃から病院暮らしで友達も出来ず、つまらない幼少時代を送っていた。


転院といっても、どっちにしろ入院生活に変わりはない。代わり映えのない日常に飽き飽きしていた。
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