無気力王子とじれ甘同居。


シーンとした夜の道は昔から好きだ。


誰も俺の世界を邪魔をしない気がするから。


でも…最近はなんだか違う。


そう、祐実の部屋に住むようになってからは、違うんだ。


ここに来て、今と同じ時間に何度か通ったルートを慣れたように歩く。


自分がどうしてこんなにイライラしているのか、理由はなんとなくわかっている。


やっと眠れるようになっていたのに。


今日はなんだか寝られなかった。
原因は多分、祐実なんだけど。


20分ほど歩いてついたそこは、昔公園だった空き地で。


端っこに大きな木が立派に立っている。


この木だけは、6年経っても全く変わらない。


俺は慣れた手つきでその木によじ登ると、太い枝にバランスをとりながら夜空を見上げるように座る。


ちょうどいいくらいに後ろの幹が背もたれになっていて、夜空を見るには最高だ。


6年前から、俺のこの場所は変わらない。



『眠れなかったらいつでも窓の外から月を見て、希和(きわ)が見てるとき俺も絶対見てるから』


6年前、そんな約束をした。


『希和は1人じゃないよ!俺がいる!ずっと繋がってるから』


あの頃の俺は、バカみたいに男らしくて、怖いものなんてなかった。


夜空に光る月を見つめながら、昔のことを思い出した。



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