僕等の青色リグレット


連日のように練習の見学をしていた私は、お茶係を買って出るようになっていた。

だいたいは練習の終わりに配るのだけど、長くなりそうな時は、間で1回用意して飲んで貰うことにしている。今日はその長くなる方の日で、裏口すぐのところにある台所で人数分コップに冷たいお茶を注いでいく。

その隣で宮司さん、つまり晴登くんのお父さんが何やら袋状のものを戸棚から出した。


「これも一緒に配ってくれるけぇの」

「はい。あっ、塩キャンディーですか」

「熱中症対策に買っておいたんや、晴登にはまずいと不評やったけどな」


見た目は普通のキャンディーと同じで美味しそうなのに、そう思いながら勧められるままに1つ袋を開けて口に入れる。なるほど、まずい。

だけど、だらけた体がシャキッと漲る感じはする。気がする。


「この暑さですし、みんな喜ぶと思います」


そう言うと、宮司さんは目尻に皴を作って笑った。

この優しい笑い方は晴登くんそっくりだ。厳密にいうと、晴登くんが、なんだけども。


「晴登は、みんなとよぉやってるかな」

「みんな慕っていますよ、完璧なリーダーです」

「そぉか。君には随分とお世話になっているようだね。家でもよぉ話を聞くで」

「晴登くんが、私の?」


思いもしないことに嬉しいような、恥ずかしいような、背中の辺りがくずぐったいような気持になる。

「どんなことを言ってました?」と聞いてみたいけど、赤面せずに聞く自信がないのでやめておいた。




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