僕等の青色リグレット
5、2年前の出来事


「これで、5つ目」


ミケジャリの花から始まり、夜明けの冷水、月桂樹の葉、河原の丸い石、朱刻の実と伝説を叶えるためのアイテム集めは、順調に進んでいた。

神起きる祭まであと1週間、このペースでいけば残り2つの条件も集められそうだが、その2つに関して私は頭を悩ませていた。

なんといっても、虹と星だよ? そう簡単に手に入るものじゃない。というか、掴めるものじゃないし。非現実的だし。

いや、そもそも”伝説”自体がファンタジックなんだけども、せめてもっと分かりやすいヒントがあればなぁ。

うーんと唸りながら近くの商店まで歩いていると、ご近所の奥様たちと井戸端会議をしている和枝おばさんを見つけた。

声を掛けようとしたけど、不意に届いたひそひそ話に足が止まる。



『……風子ちゃん、まだ退院しないんかねぇ?』

『そぉねぇ、でも仕方ないわ、あんなことがあったわけやし』

『あれから2年よね』

『そうそう病院に努めてるヘルパーさんに聞いたんやけど、毎日、病室の前にお花が届けてる人がいるそうよぉ』

『まぁ、ロマンチックやねぇ、誰やの?』

『それが分からんのやて。でも、宮司さんとこの坊ちゃんやないかって話。今年の神起祭で風子ちゃんのため鳳を舞うんやって言われてるし』

『そうそう、なんせあの2人は、』


そこまで聞いたところで、和枝おばさんと目が合った。


「あれ、芙海ちゃんやないの、どぉしたの? そんなところに突っ立って」

「あ、いや、別に」

「今日もお使い? お姉ちゃんは人使いが荒いけぇ大変ね」

「あはは」

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