御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

そんな早穂子を見て、ゆずは苦笑する。

「いやいや……それは蓮杖さんが副社長のこと、本気で好きだからでしょ。全然重くないよ。むしろ私的にはちょっと意外だった」
「意外……?」

早穂子は顔を上げて、ゆずを上目遣いで見上げた。
すると彼女は、少しだけいたずらっ子のような顔で早穂子を見つめ返す。

「うん。普通の女の子みたいに、嫉妬するんだなって」
「――そ、そう……だったの……。でも、こんな気持ち生まれて初めてで……自分でもびっくりして……そのことで頭がいっぱいで。これはこれで、まずいと思うんだけど」

早穂子が不安げな顔で目を伏せると、ゆずが「なに言ってるの」と肩をすくめた。

「もっとシンプルに考えようよ。蓮杖さんは、本当に副社長のことが好きで、大事なんだね。それって素敵なことじゃん」

ゆずはそう言って、ダイニングテーブルの上に身を乗り出すようにして、早穂子の手をぎゅっと握った。

重苦しい自分の思いを『素敵なこと』だと言ってくれたのは、彼女なりの優しさだと思うが、肯定してもらえた喜びに、早穂子の肩から少しだけ力が抜けていく。
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