御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「……わかったって」
そんな二人を見て、鳥飼は困ったように笑って、それから早穂子に「行こう」と言って、歩き出した。
「あ……ごちそうさまでした!」
早穂子はふたりに軽く頭を下げて、それから鳥飼の隣へと駆け出していく。
「和弘君、また来てね!」
背後からマリィの声が響いたが、鳥飼は軽く手を上げるだけで、やっぱり振り返りはしなかった。
外に出ると、風がびゅうっと吹き抜けて、鳥飼は少し鬱陶しそうに、眼鏡にかかる前髪をかき上げる。
その一瞬、なぜか鳥飼が泣いているのではないかと思って、早穂子はドキッとしたのだが、もう一度見直すと、涙は浮いていなかった。
当然だろう。兄の店に行って、彼が泣く理由がわからない。
(気のせいだったのかな……)
だが心あらずと言ったふうに物思いにふけっている鳥飼の横顔を見上げていると、ふと、彼が公園で話していたことを思い出していた。
報われない恋をしていたのだと――。