御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「好きになれそう……」
「蓮杖さんにもいろいろあるみたいだし、別に急がない。でも今後誰かにいてほしいと思う時が来たら、俺を選択肢の一つにしておいてほしいなと思って」
「――」
落ち着いて話を聞けば、彼の言葉はすんなりと心の中に入っていく。
(好きになれそうだから付き合う……)
考えてみれば、なんということもない。
確かに、周囲を見ていると、なんとなくいいな、くらいで付き合うカップルのほうが圧倒的に多い。
彼が言うことはまったくおかしな話ではないのだ。
大恋愛で結ばれなくてもいい。ゆっくりと気持ちをはぐくんでいくのだって、素晴らしいことだろう。
そもそも――自分と始だって、大恋愛の末の恋人同士というわけでもないのだから。
自分は入社時からずっと始のことをほのかに思っていて、あっという間に恋に落ちたけれど、始は違う。
早穂子とは体から始まった始にとって、自分は『気持ちがいい』相手で、『居心地がいい』相手で、それ以上でも以下でもないのだ。
(私の理想と現実が、そもそも乖離しちゃってるのに……変な話よね)