御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

ただ、あれから少しずつ睡眠障害のほうは改善されていて、以前ほど服用せずとも眠れるようになったのが、少し不思議だった。

勝手な推測ではあるけれど、始との別れで、いい意味で心が強く、たくましくなったのかもしれない。

「鳥飼、あっちのほうで女子がお前と話したいって言ってたぞ」

鶴田が鳥飼の肩にガバッと腕を回して悪い顔をする。

「あー……そう」
「まーたお前、そんなどうでもよさそうな顔をして! よし来いっ!」
「あっ、お前っ……!」

鶴田は強引に肩を組んだままの鳥飼を、引きずるように別のテーブルに連れて行ってしまった。

「あらら……」

ゆずが苦笑しながらそれを見送り、早穂子に申し訳なさそうに手を合わせた。

「彼も相当飲まされてるからなぁ……ちょっと見張ってるわ」
「うん、私のことは気にしないで。後で一緒に写真撮ってね」
「もちろん!」

ゆずはぐっと親指を立ち上げる。

式は始まったばかりだ。話すチャンスはいくらでもあるだろう。

早穂子は笑ってゆずを見送った。
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