御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「おはよう」
髪をくしゃっとかき上げながらドアの内側に入ってきた始は、スーツではなく、コットンのカットソーに薄手のデニムジャケット、そしてベージュの細身のパンツ姿だった。
(私服……初めて見た……)
スーツ姿は何度か見たことがあるが、オフの私服は初めてだ。
シンプルなきれいめカジュアルという早穂子の趣味ど真ん中を突いてくる始に、早穂子はなんとも複雑な気分になったが、いやいや今は、そんなことを考えている場合ではないと、唇を引き締める。
「お……おはようございます……」
「んー……、あ、あさごはん中?」
始が首をかしげる。
「はい……今から」
こくりとうなずくと、始はふっと笑って、一歩中に足を踏み入れつつ、じっと早穂子を見下ろす。
「ふーん。和食だ。いい匂いだね。ちなみに俺、昨日は昼からなにも食べてないんだよね」
「そうですか……」
「――」
(この強い視線……)
ジーッと始に見られている。
穴が開きそうだ。
あんまり見ないでほしい。
今さら気づいたが、すっぴんでルームウェア姿なのだ。