御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

してやったりと顔に書いてある。


「驚いた?」
「――驚きました」


(そうか、そういえばこの人は私を驚かせるのが得意だった……)


それにしてもなんだかくすぐったい。

早穂子は身じろぎして、シーツに半分、顔をうずめる。


「えっ、なんで顔隠すの……ハジメちゃんにはつきあってらんないわってこと?」


(ハジメちゃん……?)


「あ、俺のことはハジメちゃんって呼んでくれたら嬉しいな。親しい人たちはみんなそう呼ぶし」


始は背後で体を起こし、早穂子の裸の肩に乗った髪をかきわけて、顔を覗き込んできた。


「いや、無理です……」
「いけずだ」
「いけずじゃないです」


弊社副社長をちゃんづけで呼ぶなんて、恐ろしすぎる。

そんな言葉に慣れてしまったら、いつぽろりと外で口走って、ボロを出すかわからない。


「でもプライベートで副社長って呼ばれるのはちょっと……」
「そうですよね……じゃあ山邑さんで」
「いやいや……」


< 72 / 276 >

この作品をシェア

pagetop