風薫る
確かに、周りの視線というか注目というか、今朝は誰かしらとよく目が合う感じはした。


おかしいなとは思ったんだ。居心地もよくなかった。


うん。悲しいことに、事態の深刻さに微妙に思い当たる節がある。


でも、私と黒瀬君は本について話していただけで。


食事もしたし、図書館も行ったし、本屋さんにも行ったし、一緒に帰ったけれど。

けれども。


……デートじゃ、ないのにな。


「騒いでるの、多分、黒瀬君のことが好きな人たちだと思うんだけど」

「そうなの?」


黒瀬君ってやっぱり人気あるんだなあ。


付き合ってる人がいるなら図書室で私と話す時間なんてないと思うから、今現在彼女さんはいない、のかな? 多分。

彼女さんがいないなら付き合いたいってなるのは、黒瀬君の素敵さを思えば頷ける。


「でも、何で今さら……?」


一緒にお出かけはあまりしていないけれど何回かはあるし、一緒に帰るのなんてほとんど毎日だし、廊下でも帰り道でも、私と黒瀬君が一緒にいるのを見ている人は結構いる。

事実、目が合って怖いとか、うわあとか騒いでいた訳だし。


そういう熱狂的? な人がいるなら、今まで騒がれなかったことの方が不思議。


いくらでも見かける機会はあったような気がするんだけれど。
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