風薫る
翌日、昼休み。


「昨日は結局どうなったの?」


一緒にお弁当を食べていた瑞穂に、開口一番聞かれたのはそれだった。


よほど気にかけてくれていたらしい。


ありがとう、でもごめん、まだ食べてるからちょっと待って。


もぐもぐ咀嚼しながら、机の中からもうすでに読み始めていた、借りたうちの一冊を取り出して見せる。


「え、借りられたの!?」

「う、うん……」


頷いて、箸でトマトを口に運んだ私とは正反対に、瑞穂は持ち上げていた唐揚げを落とした。


ぽとり、瑞穂の青いお弁当箱に再び納まった唐揚げに、こっそり息を吐く。


危ない危ない。

机の上に置いた本に落ちちゃったら、大きな油染みがつくところだったよ。落ちなくてよかった。


「どうやって取ったの、まさか手が届いたとか……?」


まさか、って失礼な。


まるで私の手が絶対に届かないことを前提にしているみたいな、懐疑的な言い種だ。ひどい。


ほぼ食べ終わっている瑞穂は箸を置いてしまって、もう聞く気満々に身を乗り出してくる。


私も仕方なく同じように箸を置いて、急いでトマトを飲み込んだ。


……ああ、トマト好きなのに。


「手は届いてないよ。助けてくれた人がいて」

「助けてくれた人って、あのよく来る人?」


興味深々な瑞穂に、そのよく来る人、が男の子だって言ったら驚くのかなあ、なんて思いながら頷いた。
< 23 / 281 >

この作品をシェア

pagetop