風薫る
「ごめん」


まだ上げられない首を傾げた状態でもう一度謝った。


親からの連絡は言い訳だ。

正直後づけの理由は何でもよかった。


俺は、木戸さんの前だけは、いつでもかっこよくはいられない。


「また明日ね。ここで絶対待ってる」


それだけ上げられない耳に短く囁いて、俺が首肯したのを見て歩いていく。


足音が速いリズムを刻んでいたのは、俺が帰りやすいようにということに違いない。


余計に染まった耳が冷めるには、閉館近くまでだろうか、しばらくかかりそうだった。
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