いてくれて、ありがとう
side A
いるのが当たり前で空気みたいになってた。

友人との飲み会やサークル行事で約束をすっぽかされることが多くなった。理解のある彼女でいたかったから、もう半年以上我慢していたけれど、自分の優先順位の低さに辛くなって、彼氏に別れを切り出したのは春、ゴールデンウィークの最終日だった。

1日ぐらいは私と遊びに行こう?とゴールデンウィーク前に約束していたのに、彼は会社の同僚とキャンプに行ってしまったのだ。

知らない人の中でもうまくやれるから。
そう言って連れて行ってもらえるよう頼んでみたけど、気難しい人がいるからダメなんだと断られた。

彼がキャンプから帰ってきた日の次の日、朝、まだ寝てる彼のアパートに訪ねて行って、別れを切り出した。

疲れてるんだけど、と不機嫌な彼に、単刀直入に、別れたい、と言った。

何言ってるんだよ、と取り合ってくれなかったので、もう一度ゆっくり、別れたい、と言った。

それ以外の言葉を発さない私に、やっと不安を覚えた彼が、ベッドから起き上がり、居住まいをただして、どうしたの、と言う。

どうしたもあるか。
そう思った瞬間に、これまでの思いが堰を切ってあふれ、ドタキャンをされて悲しかったこと、自分の気持ちなど何も気にしてはくれないのだと絶望したことを一気にまくしたてた。
言葉とともに目からは涙があふれ、その有様に、さすがに彼は私の気持ちがすでいいっぱいいっぱいであることを悟ったようだった。

しばらく別れる別れないでもめたが、後日、彼は私を解放してくれることになった。

別れの挨拶をした私に、彼は言った。

いるのが当たり前で空気のようになっていた、と。
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