Sweet Love
「……告白タイムだね、きっと…」



 ストレートのロングヘアに明るくない茶髪。彼女の顔はお人形さんみたいに可愛らしくて、落ち着いた雰囲気がある。とても小柄な子だった。


 彼女は萩原くんの前で立ち止まる。林檎のように赤く頬を染め上げ、萩原くんに向かって何か言葉を発した。



 ――これは絶対、告白している。そう思った。



 何と言っているのかは全然聞こえないけれど、彼女の表情を見ていればわかる。だいたいどんな話をしているかは容易に想像できた。


 はたして萩原くんは何て答えるのだろう。一体どんな顔をして彼女の告白を聞いているのだろうか。


 もし彼がこの場で頷いてしまったら――。


 でもひょっとしたら、すぐに返事は出さないかも知れない。よく考えてから、返事を出す可能性もある。



 わたしは、どうしてこんなに気にしているんだろう……。


 自分はあまり萩原くんと話したこともないし、そんなに親密な関係でもないのに……。



「あの子ってさ、もしかして隣のクラスの子じゃない?」

「……やっぱり? わたしもなんか見覚えあるなとは思ってたんだ」

「うーんとね、名前は確か――」



 なんだったかなあと言いながら、裕子はこめかみに指を当てた。わたしは裕子の顔を見つめて、じっと待つ。数秒後、裕子はこめかみから指を離して顔を上げた。



「……思い出した! 確か朱菜ちゃんだよ! 花咲朱菜(はなさき あやな)ちゃん!」



 高調子な声で、裕子は言う。



「朱菜ちゃんって言うんだ……」

「うん。なんかクラスの男子が話してたの聞いたことあるよ、あたし」

「……」


「――確か、クラスの男子が軍団になって可愛い可愛いとか騒いで言ってたっけ。あんな子と付き合ってみたいだか何だか……。男子はあーいうのがいいんだねえ…」



 裕子は横目で窓の外に視線を向ける。わたしがもう一度窓に目をやると、既に二人の姿はその場からもう消えていた。
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