Sweet Love
***



 あれからカレーを食べて、後片付けを終えたわたしは、自分の部屋へ戻った。楽な部屋着に着替えてから、先ほど優希さんから貰った例のお菓子を開けてみる。


 開けた途端、チョコレートの甘い匂いが部屋中に漂った。


 わたしは、それを一枚手に取り、ゆっくりと口の中へ運ぶ。


 甘い。――だけど、しょっぱい。


 気が付いたら、また涙が頬を伝っていた。萩原くんの顔が脳裏に浮かぶ。わたしは続けてもう一枚手に取り、泣きながら食べ進めた。彼の顔が浮かぶのと同時に、朱菜ちゃんの顔も浮かんできた。


 二人が一緒にいるところを見ただけなのに、自分はこんなにも余裕がない。胸が張り裂けそうで、思い出すと涙が止まらなかった。



 ――片想いってこんなに辛いものなんだ…。



 応援しようと、諦めると決めていたのに、途中から感情のコントロールがきかなくなった。だいたい、これほど辛くなるとは思わなかった。


 わたしは、ベッドに置いていた携帯を開く。入学式のあのときに撮った、桜の木の写真を、意味もなく見つめた。どうしてこの桜の写真を見たくなったのか、それはわからない。でも、あの場所でわたしと彼は、少ない言葉を交わした。教室以外で、彼と話す時間があった。


 もしかしたら、それが特別になっているのかも知れない。クラスの中で、初めて話しかけてきたのは彼だ。わたしは、それがただ純粋に嬉しかった。


 再びベッドに携帯を置く。わたしは耐えられない思いと一緒に涙で流しながら、顔を手で覆った。


 …泣き疲れるまで。


 …涙が枯れるまで。


 小さく声を上げながら、わたしはベッドの上で泣き続けた。
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