Sweet Love

「……それは、」



 ……言葉に詰まる……。


 心の中では好きだからだよ、っていくらでも答えられる。


 だけど、今この場で言ってしまったら、……わたしは最低な人間になってしまう。


 彼女という朱菜ちゃんの存在を知っていながら、わたしがその理由について語るというのは、最低な行為だ。


 というより、…言えるはずがない。


 …きっと、萩原くんを困らせてしまう。



「……石田?」

「あ、ごめん…」

「言いたくないなら、言わなくていい。…けどさ、あれから気になってたんだよ。ずっと」

「え?」



 わたしは耳を疑った。


 何故萩原くんが気にするのか、それが不思議だった。


 確かにあの場では、萩原くんにとって衝撃的な出来事だったかも知れない。実際、スーパーのあの場で女の子が一人で泣いていたら、誰だってそう思う。


 わたしと萩原くんはあまり話さないし、特別仲が良いというわけでもない。どうして、気になってたなどと言うのか、不思議で堪らなかった。覚えていたとしても、普通だったら深入りはしてこない。



「最近、俺のこと避けてるだろ。あのスーパーで会ってから避けてるし、おまけに元気ないし、目も合わせようとしない。……だから、それと何か関係しているんじゃないかって思ってさ」



 わたしはスカートの裾をギュッと手で掴んだ。



「ごめんね。……わたし、何も言えない」



 言えないというか、言いたくないのだ。


 二人を壊したくなかった。
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