Sweet Love
 やっと笑いが収まったのか、萩原くんはゴホンと、ひとつ咳払いをした。



「これは俺の勝手な解釈になるけど、多分松田は、スニーカー買うのをこのあと付き合えって牧原に言ったんだよ」

「えっそういうことだったの? …わたし、てっきり告白してるのかと思った」

「…だと思った。だってさ、石田一人でそわそわしてるからもう可笑しくて、可笑しくて」



 そう言って、萩原くんはわたしの顔を見るなり、また笑い出した。


 だからさっき、わたしが話し掛けようとしたら止められたんだと納得する。



 でもそれって、――わたし、ただのバカじゃん…。



「でも、裕子ちょっと顔赤かったよ?」

「ああ…多分それはそれで、別に理由があるんじゃない」



 別の理由って何だろう。



「そうなのかな…。裕子は何でいつも牧原くんに冷たい話し方するんだろ」

「気になる?」



 そりゃあ、裕子のことだ。友達だし、気になるのはもちろん…当たり前だ。



「うん」

「これから見ていればわかるよ」

「え?」

「多分、松田にとって牧原は、気になる存在になっているのは確かだと思う」

「…それって、裕子が牧原くんを好きってこと?」

「いや、…まだ好きにはなってないかも。…わかんない」

「わかんないって、…何それ」



 随分と、曖昧な言い分だ。



「…まあ、そのうちわかるだろ」



 そう言って萩原くんは、ガタンと音を上げて椅子から立ち上がると、鞄を肩に掛けた。
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