ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく

毎週水曜日の12時45分から15分間。

いつもなら流行りの音楽や放送部の人たちが作った原稿を読み上げる声が流れている。ほとんどの生徒はそれを雑音と同じにして耳を傾ける人はいない。

だけどこの水曜日の15分間だけは、騒いでる人も恋愛話で盛り上がってる女子たちも手を止めてスピーカーの声に反応する。


『今日の相談は2年2組の……』

匿名希望以外は実名か本人が書いたニックネームが読み上げられて、いつもどこかから『きゃー』と悲鳴にも似た歓喜が沸き起こる。

私は放送室のテーブルに置かれた投稿ボックスを見つめて、はあ……と小さなため息をついた。

まるでラジオ番組のように悠長な口調で話す声は直接聞くよりも少し低くて。心地いいとは感じないけれど声フェチの人にはたまらない声質だと、誰かが言っていたような、言っていなかったような。

読んでほしいがために作ったような相談話をクラスメイトの詩月(しづき)が優しい言葉で的確な答えを導いていく。

そんな投稿ボックスに入れられた相談用紙を詩月は15分の間に3件終わらせて。


『今日の相談は以上です。次回はまた水曜日。
小さいことでも大きいことでもなんでもオッケーなんで気軽に投稿してください。では、また』

慣れたように言葉を締めくくると、カチッと校内放送のスイッチがOFFになった。 
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