ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく

「あ、そういえば飲み物とか出してなかったな。お茶はないけどジュースならあるよ。なにがいい?」

「べつに私はなにも……」

台所に行こうとする詩月を見て私はテーブルに手をついた。――その時、ビリビリッ!と身体中に電気が走る感覚がして、私の意志とは関係なく映像が流れてくる。


言い争うふたつの声。


『いい加減にしてよ!!』

ガチャンとテーブルに打ちつけられたコップが破片へと変わっていく。


『うちにはうちのやり方があるんだからお母さんは口を出さないで!』

テーブルを挟んで向こう側におばあちゃんがいて視線の先にいるってことは、この読み取れた思念はおばあちゃんのものではないことになる。

きっとこれは叫んでいる女の人の思念だ。


『口を出してるつもりはないのよ。ただ少しやり過ぎなんじゃないかって思って。だからあの子もあんな風に……』

『今はちょっと反抗してるだけよ。あの子だってその内私たちの考えが理解できるようになるわ』

『そんなに焦って考えを押し付けなくてもいいんじゃないの?』

『お母さんだってそうやって私を育てたじゃない!だからそういう考えの人と私は結婚したのよ』

『美恵子……』

『もう子育てなんて忘れちゃったかもしれないけど、私だって厳しい家庭で育って当時はツラかったけど今は感謝もできるようになった。だから私たちの教育に間違いはないの』

『………』

『だからこれ以上うちの家のことをあれこれ言うのなら、お母さんには会いにこないから』

そこでコンセントを抜かれたみたいにプツリと映像は途切れてしまった。
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