魔法使いの森と魔女の館
「アミナちゃん。いる? 」
カラランとドアベルを鳴らして、隣のパン屋のマーサおばさんが入ってきた。

「います。おばさんこんにちは」
「メルさんの具合どう? スープ持ってきたから後で食べてね」
「ありがとう。おばさん」
私の返事を待たずに、おばさんは自宅に続くドアから奥に入って行った。
父は海外貿易という名の家出、母は私が小さな頃に病死。
どれだけマーサおばさんに助けられたことか。

(いつもいつもありがとう)と、心の中で手を合わせ、唱えていると、
「メルさん寝込んでいると、本業の仕事入ってきたら大変ね。大丈夫なの? 」
「一応、本業休業の看板は出しているので大丈夫だとは思うんです」
「そうよね、もし来たら待ってもらいなさいね。それから、街の中にお役人や警察が増えてるみたいなのよね」
さすがは、街の情報通。
「何かあったのかな? 」
おばさんは、窓から外を見ながら、
「噂も何も聞こえてきてないけど、物騒になるのはいやよね。アミナちゃんも早く店じまいしなさいね。じゃあ、おばさん行くけど、なにかあったらすぐ来なさいね」
「ありがとう、おばさん。そうするわ」

おばさんは来たときと同じように、ガラスドアから出て行った。
忙しいのに来てくれてありがとう、おばさん。












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