ヒトツボシ ーヤンキー家政夫と美味しい食事ー

壊れたブレーキとお父さんの秘密


明かりの灯った家々を横目に通り過ぎ、我が家が見えてきた。


我が家はどこにも明かりが点いておらず、真っ暗だ。


お父さんはまだ帰っていないようだ。


ホッとする。


顔を合わせたくないので、今日は本当にさっさと寝よう。


冬場だからケーキは一日くらいもつだろうし、冷蔵庫に入れて、どう食べるかは明日考えよう。


明日なら真衣も食べてくれるかもしれない。


玄関を開けて、「ただいまー」と声をかける。


もちろん返事はない。


家の中はしーんと静まり返っている。


誰もいないことはわかっている。


最近は誰かいることが多かったので、「ただいま」と言うことが癖になり始めているのかもしれない。


でも、「ただいま」なんて言うべきじゃなかった。


返事がないと、むなしくなるだけだ。

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