君が思い出になる前に…
「どうしたの?」
ノートをじっと眺めていたおれに、絵美が言った。
「あっ、いや、なんでもない…、明日までね…。わかった…」
そう言ってノートを受け取った。
「今日いっしょに帰ろう」
「う、うん…。いいよ…」
絵美と帰る方向は一緒だった。
そうそう、よく一緒に帰ったっけ。同級生に冷やかされたり羨ましがられたり、照れながら歩いて帰ってたなぁ…。
でもそれは夏休みに入る少し前までだった。
絵美の勘違いは、その頃だったっけ。


チャイムが鳴った。昼休み終わり…。
校庭から帰ってきた紀子がおれの事をジロジロみている。
おれが紀子を見ると、素知らぬふりをする。
なんだよ…。なにが言いたい?
偶然だよ偶然…。偶然の出来事ですって。そんなに気にすんなよ…。
起きる事を予測して行動したなんて言ったって、どうせ信じないだろ?だからほっといてくれよ。
そう言いたかった。
歴史は担任の岡本先生。
おれの働いているスーパーに、時々奥さんと孫を連れて買い物に来ていた。だから、顔をみても懐かしいって感じ、あんまりしないなぁ。
会うたびに声をかけてくれてたし。
けど、やっぱり若い…。
「明日の中間テストだけど、範囲はわかってるなぁ。今年は受験なんだから、そろそろ本腰入れろよ」
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