Holly × Adult


それから眞木さんが車を走らせている間、私たちは他愛ない会話をしていた


今日学校であったこと

新しい友達ができたこと

学部で学んでいること


運転の邪魔じゃないか不安だったけれど、どれも眞木さんは興味深そうに反応してくれて嬉しかった


だからどのお店に行くかなんてすっかり頭からはなれていて


到着した先がお洒落で高そうなレストランだったことに、私は目を輝かせつつも戸惑ってしまった


「すごい綺麗なお店.....」

「イタリアンの店なんだけど、パスタは好き?」

「はい、凄く好きです。でもこんなお洒落なお店は、普段は全然.....いいんですか?」


白い建物の外観とガラス張りで店内が見える仕様に、子供が入る場所ではないような高級感が漂っている

眞木さんは私の反応をどう思ったのだろうか、少し微笑むと


「友達と行くようなお店とは違うかもしれないけど、せっかく大人と来たんだから遠慮しないで」


そう言って私を促して歩き出した


「は、はいっ」



___せっかく大人と来たんだから


この言葉の意味を、歩きながら考える



眞木さんは子どもを連れてきた気持ちでいるのかな

一緒にこのお店に入る人がきれいな女性じゃなくて、童顔で小さな私で恥ずかしい思いをさせてたりしないかな


店のドアを開けて待っていてくれる彼に慌てて頭を下げてから店内へ入る


「ありがとうございます.....!」


一歩足を踏み入れたその中はシャンデリアがキラキラと輝いてて


「うわぁぁ」

思わず感嘆の声を漏らす


その間に眞木さんは店員と何やら話をしていて

何やら了承した様子の店員が「ではこちらへどうぞ」とテーブルへ案内してくれた


そうして通されたのは店の奥側、真横がガラス張りになった一角で、そこから見える景色は花が咲き乱れるヨーロッパ風の庭園


碧い硝子が埋め込まれたタイルの噴水が薄暗い庭園でライトアップされ、水がキラキラと輝いていた


「すごい綺麗.....!」


「この景色が好きで、毎回ここに座るんだけど.....」


「異世界感があっていいですね」


「そう、異世界だよね」


はじめて眞木さんが好きな物を知れたことが嬉しかった


そしてそれに共感できたことも嬉しかった


そんな会話をしながら私たちは席につき、メニューを開く


「パスタは何が好き?」

「うーん、どれも好きで迷います。お勧めはありますか?」


私はメニューを見てもよく分からず、眞木さんのお勧めで選んでもらった



数分後、運ばれてきたのは魚介をふんだんに使ったペスカトーレ


見た目もお洒落で味も美味しいパスタに、一口食べてすぐに顔がほころぶ



二人して同じものを食べているのは、感想が言い合えるから好きだと感じた
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