甘え下手を治すには溺愛を
65.千紗:その後

「高校生と付き合うことになったって言われた時は驚いたよー!」

 私の前で笑う亜紀ちゃんはもうすぐ結婚する。

「私も。」

「私もって自分のことでしょうが!」

 フフッと笑うと亜紀ちゃんもアハハッって笑った。

 会社の食堂。
 寿退社の亜紀ちゃんとはこれで最後のランチ。

「で、そのあとすぐに結婚してますます驚いちゃった。
 学生結婚って大学生くらいの人がするやつでしょ?」

「ほ、ほとんど大学生だったよ?」

 そう。大学の合格発表を見に行った帰りに役所に提出した婚姻届。
 それが裕への少し遅れた誕生日プレゼントでもあった。

 真剣交際=結婚を前提にしたお付き合いっていうのは分かるんだけど、本当にしちゃうなんて。
 自分でも驚いてます。

 でも裕とは最初に会った時から、よく分からない状況にすぐになっちゃって……。
 なのに大丈夫って思える不思議な人だった。

「しかも彼って将来有望だし!
 お家もお金持ちだし?」

 裕はもちろん大学にも受かって、大学の合格が結婚をご両親に認めてもらう条件だった。

 と、いうか裕のご両親は大歓迎で、どちらかと言えば私の両親を説得する方が大変だったんだけど……。

 そもそも結婚は大学合格まで待つけど、すぐにでも千紗と一緒に暮らさせてくれないなら勉強できない!ってよく分からない言い分をOKしちゃうご両親は理解あると言えばいいのか……どうなのか………。

 おかげでずっと一緒にいられたんだけど………。

「ま、千紗ちゃんのそういう顔を見てると大丈夫って思えるけどね。」

「え?どういう顔?」

 ヤダ。惚けた顔してたのかな。

「今すぐにでも彼に甘えたいって顔。」

「そ、そんなことないよー。」

 そりゃ……裕に会いたいとは思ったけど。

 裕はどんなに一緒にいても会いたくなって、その腕の中で甘えたいって思ってしまう不思議な人です。
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