甘え下手を治すには溺愛を
6.裕:悪い男

「とりあえず連絡先交換しよ。」

 ポケットの中で手をつないでるのに、嫌がらない千紗。

 最初にすごいことすると、ちょっとしたことなら大丈夫って、まさにそのままだろ。
 抱きついた後だから、手ぐらい大丈夫っていう…。

 この子、悪い男にひっかかりそーって、浩大にひっかかってるし、何より、今、俺にひっかかってるよな。

 他人事のように心配する視線を向けると、千紗は携帯をバッグから出そうとしている。

 で、千紗からしたらどこの誰だか分からない俺に連絡先教えちゃうと。
 大丈夫かよ。この子。

 ま、俺には都合いいんだけどさ。

「ほら。これで読み取れる?」

 連絡先の読み込み画面を出して、千紗の前に差し出す。
 疑問に思う前に、どんどん進めちゃえ!ってやつだな。

「え、あ、うん。」

 無事に連絡先を交換すると、次の約束を取り付ける。

「じゃ次は土曜ね。」

「え?土曜?」

「何?彼氏との約束でもあんの?」

 っていうかないだろ。知ってて言ってる俺って腹黒ー。

「もしあったとしても、予定あるからって断るくらいがちょうどいいんだぜ。
 いつもつかまる奴なんて都合がいい女って感じ。」

 悲しそうな顔をして俯いてしまった千紗。
 しまった…。ちょっと図星過ぎたよな。

「だ・か・ら。次に土曜誘われてもこれで「予定あるから」って断れるだろ?」

 頭をくしゃくしゃっとかき回してやっても、なんの反応もない。
 げ。また泣いてんのか。

 冷や冷やしながら手を離せば小さな声で「分かりました」って聞こえた。
 大丈夫かよ。この子。
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