彼がメガネを外したら…。



コソコソと内緒話をする二人を、史明が訝しさの漂う目つきで窺っているので、晶は気を取り直して史明に向き直った。


「ここから続く細い道を少し行ったところの左手の斜面の上に崖が見える。その崖の下に石垣らしきものを見たことがあるよ。この山は、山菜取り用の道はあるけど、迷いやすいから気をつけて。……それじゃ、私はもう行かないと」

「分かりました。ありがとうございました」


史明は晶の言葉に一つひとつ頷くと、丁寧に頭を下げてお礼を言った。


「念願の城跡が見つかればいいね。まあ、頑張って!」


そう言った晶は、チラリと絵里花を見てウインクする。その『頑張って』には、別の意味も込められていた。
晶は軽快に軽トラへ乗り込むと、狭い道で上手に転回させて、走り去っていった。




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