彼がメガネを外したら…。
「……岩城さん?」
覗き込まれて、史明は我に返る。
「……こんなに茂ってたら、なかなか石垣は見つけられないかもしれない。だから、なんでもいいから人工物と思しきものを探してほしい。……それと、別々に探した方が効率がいいとは思うが、はぐれてしまったら厄介だから、一緒にいた方がいい」
「……はい」
絵里花は史明を見上げたまま、小さな声で小さく頷いた。
『一緒にいた方がいい』
深い意味はないことは分かっているのに、そう言ってくれたことが嬉しかった。
『バカみたい』と詰ってみたり、こうやって殊勝に(可愛く)頷いてみたり……。こんな絵里花に、史明は調子を狂わされてしまう。
どんな顔をして見せたらいいのか分からなくなって、ぎこちなく回れ右をして歩き始めた。
絵里花はそんな史明の後を、嬉しそうに歩きながら、周りをキョロキョロと見回して目を光らせた。
しばらく二人で探索してみても、遺構のようなものは見つけられず、史明は立ち尽くす。
「ここ以外にも、それっぽいところがあったんですよね?そこ、行ってみましょう!」
絵里花は、史明が『帰ろう…』なんて言い始める前に、ポジティブ思考にシフトさせた。史明もそれに釣られて頷いてしまう。