彼がメガネを外したら…。



「同じような石が他にもないか、探してみます!」


メガネが壊れて、不便になってしまった史明の代わりに、絵里花が動き回る。すると、草が生い茂る中に、他にも数個が見つかった。
それら全ての石をよく観察してみると、規則性を持って配置されていることが分かる。


「……これは、なにか建物の礎石だな」


史明の見解に、絵里花も興奮気味に力強く頷いた。


「なにかと言うと…、天守閣ですか!?」


城といえば、天守閣。絵里花の発想は、単純極まりなかった。


「いや、天守を持ってたような城ならば、他の文書でとっくに確認されてるだろう」


「じゃあ?ただの建物の跡ですか?」


絵里花は、今度は消沈気味に相づちを打つ。


「『ただの』って言う割には、しっかりした作りの建物だよ。少なくとも、茅葺や板葺きの掘っ立て小屋ではない」


「……?」


ここで並んでいる礎石だけで、どうしてそこまでのことが考察できるのか、絵里花には分らなかった。


「俺じゃなく、建築史専門の研究者の分野だけど。多分、礎石の大きさから建物の状況も分かるだろう。……でも、礎石を使うということは、それなりの重量を支えているということだ。瓦葺きの建物か、もしくは高層で頑丈なものか……」


それだけのものが、ここに存在していた理由。それを考えると、ここに〝城〟があったと結論づけても無理はない。


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