王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

残酷で悲しい年月をなかったことには出来ない。深く心に刻まれた傷は、癒されたとしても痛ましい爪痕を残すだろう。

けれど。だからといって未来までもが絶望に奪われる訳ではない。どんな環境にいようとどんな立場であろうと、未来は自分の足で進むものなのだから。

そこに幸福の種をまき育てることをやめない限り、いつかは必ず光り輝く花が咲く。

小さな花でいい。咲かせ続けた努力はきっといつの日かあのキンポウゲの丘のように、煌めき溢れるエデンになるはずだ。

「強い想いがあれば、必ずエリオットの心は救えるわ。神様はそこまで残酷じゃない。愛が尊いことを教えてくださったのは、神様なんだから」

憎悪に曇っていたメイベルの瞳が浄化されるように、ポロポロと透明の涙を落としていく。

そっと視線を投げ掛けてきたリリアンに、ギルバートは静かに目を伏せるとこくりと頷いた。

「——メイベル。国王殺害を図った罪は重い。ステルデンの地を踏むことを禁じ、流刑の地で一生を過ごすことをお前への断罪とする。……そこでせいぜい敬虔に生きることだな」

愛ゆえに愚かな間違いを犯したメイベルへの罰は、この先の人生を愛に捧げて生きることだった。

それがメイベルにとって幸福となるか不幸となるかは、彼女の生き方次第だ。

けれど、温かい涙を零し続けるメイベルの姿に、リリアンはきっとこれでいいのだと思うことが出来た。


窓の外は白々と夜が明け始めている。
オアーブル宮殿に、新しい朝が訪れる瞬間だった。

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