王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です


(……なんだか眠れない)

その日の夜中。リリアンは寝床についてからもなかなか寝つけないでいた。

それも仕方がない、ギルバートのことを考えると胸がドキドキと高鳴って目など冴えてしまうのだから。

(ギルは……私のことを本当に好きだったんだ……)

幼馴染としてとても慕われていることは分かっていた。けれどそこに深い恋慕の気持ちがあったとなると、話は違う。抱きしめてきた意味も、キスの意味も、みんな変わってきてしまうのだから。

意識してしまうと、そのすべてが恥ずかしくてたまらない。リリアンが戯れだと思い込んでいたとき、ギルバートは本当はどんな思いでふれてきていたのだろう。恥ずかしがって抵抗するリリアンの姿は、彼の瞳にはどう映っていたのだろう。

そんなことを想像すると、リリアンは頭が熱くなって顔から火を噴きそうになってしまう。

そして、想いを告げられたことで自分も彼に恋していたことに気づいた。幼なじみだから、身分が違うから、そんな思い込みでくるまれていた気持ちの中に、本当の心があった。ギルバートのことを、男性として愛していると。

振り返ってみれば簡単なことだった。抱きしめられたときだって、キスのときだって、リリアンは全然嫌ではなかったのだから。

ただ恥ずかしくて、こんなことはいけないという思い込みがあって必死に拒否していただけで、嫌悪感など一度も湧いたことがない。もし同じことを他の男性にされていたのなら、リリアンは吐き気を催すほど怖気が走っただろう。

(じゃあ、胸をさわられたときは……?)

考えてみれば、それもたやすいことだった。リリアンは彼の性のはけ口になることが悲しかっただけなのだから。

好きだからこそ、不埒な関係になりたくない。身体だけでなく心も愛して欲しい。恋する乙女ならばそう願うのは当然のことだろう。

(それならもし、ギルがまた身体にふれてきたら……?)
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