カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


「駄目ですか?」

「……お願い、する。この間のご飯。美味しかった」

「よかった! 明日から作りますね! 食べたいものがあったら教えてください」



 笑顔で答えると、なぜか夏彦さんが照れているみたい。わたし、何か言ったかな。どの部分で照れたんだろう。


 考えていると、夏彦さんが立ち上がった。



「夏彦さん?」

「……ゆっくり食べてて。風呂入る」



 そう言った夏彦さんの顔は真っ赤で、そんな顔は初めて見る。


 後ろを向いてしまった夏彦さんだけれど、わたしまで照れてしまう。あんなふうになってしまった原因はわたしなわけで……。


 去っていく姿を眺めていたら、顔が熱くなってきた。



「どうしよう。ドキドキする……」



 落ち着いて食事に集中することにした。
 いつの間に食べたのか、夏彦さんの食器に食べ残しはなかった。

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