カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 そんなことを考えていたら、店長が立ち上がる音がした。
 近づく足音。
 目の前に座る音。
 目線を下げていても見える店長の膝。


 こ、怖いぃぃ!!
 助けて、誰か!!


 心の中で叫び続けたって、どうにもならない。わかってるけど!



「名前は?」



 聞かれて、わたしは脱力した。


 わたしは不審者としてここに連れてこられた。考えていたことが正解だったんだって思った。



「う……ごめんなさい!!」



 とっくに緊張や焦りを通り越していた。
 やっと喉を通り過ぎたのは謝罪の言葉と涙だった。

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