カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 会社もすぐに出ろと言うほど鬼ではない。でもわたしは早くあの会社から姿を消したかった。


 母親にも話さなくてはならないけれど、今は自分のことで精一杯。文句や暴言に付き合えるほどの余裕はない。
 そろそろ、不倫のことも知っているかもしれない。そう思うとスマホの電源を入れるのが億劫になる。


 そんなことを考えていた時に、夏彦さんが突然立ち上がった。
 何か怒らせるようなことを言ったのかと焦っていると、いきなり事務所に姿を消した。


 その間にわたしはお会計を済ませる。謝ろうかと考えていると、帰り支度を済ませた夏彦さんが再び現れた。

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